本文へスキップ
Japanese Dream
← インサイト一覧

2026-08-29

LinkedIn ↗

"If you don't fit in, you will be the foreigner forever": a Swiss life in Tagawa

「溶け込まないと、ずっと外国人のまま」田川に家を建てたスイス人の話

ローランドさんはスイスの出身だ。ドイツ語圏で育ち、今は福岡県の田川に家を建てて暮らしている。

なぜ東京でも大阪でもなく、福岡の、しかも田川なのか。答えは簡単だった。奥さんが田川の生まれだからだ。

日本に来るときは、いつも田川だった。福岡市や北九州のあたりにいることが多かった。東京にも京都にも宮崎にも広島にも行ったが、過ごした時間の大半は田川だった。奥さんが家族から遠く離れたくなかった。それで田川に落ち着いた。

スイスから移ってきて、何かを諦めたかと聞くと、特にない、と返ってきた。むしろ得たものの方をよく話してくれた。

「人の輪ですね。スイス人はとても内向きなんです」

スイスでは、隣に新しい人が越してきても、話をするまでに何週間もかかる。人と混ざりたがらない。

田川はその正反対だった。誰かが越してくれば、みんなが興味を持つ。しかも外国人だ。話しかけに行こう、となる。彼が家を建てた地区は、住んでいるのが70歳を超えた人ばかりだという。毎日、誰かが話しかけてくる。

公民館の掃除がある。神社の掃除がある。祭りがある。全員が集まって、手を貸し合う。畑をやっている人は野菜をくれる。こちらはどこかへ行ったらお土産を返す。スイスでは、そういうことがない。

言葉の話も聞いた。スイスには公用語が4つある。母語はスイスドイツ語。学校ではドイツ語、フランス語、英語を習った。日本語はもっと後で、興味を持って始めた。フランス語はほとんど忘れてしまったそうだ。

日本語で意外だったのは文法だという。

「文法は思っていたより簡単でした。論理的で、例外が少ない」

ドイツ語はほとんど例外でできている、と彼は言う。それに比べれば筋が通っている。

苦しいのは文字の方だ。自分は読んで覚える人間だから、日本語の文章をその場で読めないことが効いてくる。読めるようになれば、そこから先は早い。ただ、そこまでが長い。漢字が多すぎる。仕事で日本語を使わないので、増える機会も少ない。それに自分は怠け者なので、と付け足して笑った。

スイスと日本で一番違うのはどこか。働き方だ、と即答が返ってきた。ただし自分は日本の会社の中で働いたことがないので、友人から聞いた話と、読んだ話です、と断りを入れた。

それ以外の部分は、ヨーロッパの中央から北のあたりと日本とで、そこまで大きくは違わないと感じている。

たとえば形式ばったところ。スイスやドイツでも、そこは大事にされる。ドイツ語には、知っている人への言い方と、知らない人への言い方が別にある。アメリカ英語にはそれがない。誰でも下の名前で呼び、youで済ませる。ただしイギリス英語は別で、特に仕事の場では形式が残る、と本人は言う。日本はドイツ語と同じ方向の話だ。

ただ、日本は段が多い。敬語があり、会社の中の位置がある。

「日本は、何にでも上下があります。自分がどこに立っているのかを知らないと、何が失礼にならないのかが分からない」

スイスでも上司は上司だ。それでも、部長でさえ同僚に近い。そこが違う。

日本の方が良いと思うことは何ですか。生活費だ、と言う。

奥さんと外食に行くとする。普通の店で、けっこう食べて3,000円。同じことをスイスでやると2万8,000円くらいになる。スイスでは、外に出られるか、どこかで食べられるか、それを買っていいのかを、いちいち考えることになる。

ただし、と続けた。日本は税金が高い。スイスは安い。

「だからどちらが良い悪いではなく、ただ違うんです」

小さな違いがたくさんあって、良いことの裏には必ず悪いことがある。逆もそうだ。慣れれば済む話で、そこまで大きな違いではない。それが彼の見方だった。

恋しいものはありますか。家族と友達、と答えたあとで、自分で打ち消した。今はこちらに家族がいる。それで相殺されている。スイスドイツ語も、会社で毎日話しているので恋しくなりようがない。

食べ物もそうだ。家にはラクレット用のオーブンがあり、チーズはコストコで買える。日本で手に入らないものは、ほとんどない。チーズも牛乳もチョコレートもスイスより高いが、寿司はスイスの方が高い。それだけの話だ。

最後に、これから福岡に来るスイスの人へ一言もらった。

「自分の国の価値観を持ち込んで、それを日本人が分かってくれると思わないことです」

スイス人の価値観の多くは日本と相性がいい、と彼は言う。時間を守ること。家に上がるとき靴を脱ぐこと。そういうものは考えなくていい。

問題はそこではない。スイス人が当たり前だと思っていて、考えずに体が動いてしまうこと。しかも、相手も分かっているはずだと思い込んでいること。それを日本でやらない。まず状況を見る。まわりの日本人が何をしているかを見る。それから同じことをする。

「溶け込まないと、ずっと外国人のままです」

コメント

まだコメントはありません。

ログインすると、いいね・コメント・リポストができます。

© 2026 Yoshi Takada · Fukuoka, Japan